ミラクルを呼んだ
過酷な旅

シンガーソングハイカー 加賀谷 はつみ Hatsumi Kagayaシンガーソングハイカー 加賀谷 はつみ Hatsumi Kagaya

“シンガーソングハイカー”
という肩書きを持つ歌姫。

差し出された名刺を見て、頭にハテナを浮かべるひとは少なくないだろう。
シンガーソングライターではなく、シンガーソングハイカー。
歌って、歩ける。そんなイメージ?
「そう、そんな感じ(笑)。2年くらい前から名乗り始めたんですけど、わりと語呂がよくて。歌と山、二足のわらじを履いてがんばっていきたいんです」
歌が好き。山登りも好き。本業は歌手だが、趣味の山登りにも全力を傾けたい。そんな思いを目に見えるかたちにしたのが、シンガソングハイカーの肩書き(造語)である。
今、歌って登れる希有なシンガーとして注目を集める彼女だが、そのオリジナリティーはいかにして生まれたのだろう。

加賀谷 はつみ

原点は病室で聴いた流行歌

原点は病室で聴いた流行歌

原点は病室で聴いた流行歌

そもそも、幼い日に夢見たのはいわゆる普通の歌手だった。
小学5年生のころ、友達づきあいに悩んだ彼女は、ストレスから摂食障害になり、病院に入院していた。病室に持ち込んだラジカセが、歌手を目指す切っ掛けだったと話す。
「その時、ラジカセから『SPEED』の曲が流れてきて、思わず口ずさんでいたんです。歌っているうちにどんどん気持ちが前向きになって……。今度は私が歌うことで誰かを励ましたいって思うようになったんですね」
歌が心を解きほぐすためのツールであるとすれば、一方で山は、それをさらに開放させるための舞台だった。
海に囲まれた千葉県出身なのになぜか山の方に惹かれる、と彼女は微笑む。
「初めての山登りは筑波山で、3才のころに父親と。兄が2人いたから、その後も山に行く機会は多かったです」
歌うことで元気を取り戻し、山登りで心労を癒した彼女は、やがてギターを手に取り、路上へと繰り出す。ライブ活動を始めたのは中学生のころ。長じて2007年からは、地元千葉で路上ライブをスタートさせた。

もちろん、最初から順風満帆だったわけではない。「届け!」と心で念じながら、誰も足を止めてくれなかった現実もある。
だが、苦況の中でこそ成長の芽は育つ。音楽事務所の関係者の目にとまり、プロになるための足がかりを得た。同年秋のことだ。
「でも、メジャーデビューとなると話はまたべつ。事務所に入っても、鳴かず飛ばず。これが最後のチャンスだからと、2011年に難しい課題を突きつけられたんです」
メジャー契約を掴むための条件——それは自主制作のCDを4700枚売り切ること。47都道府県すべてで路上ライブを敢行し、CDを1県につき100枚、すべて自らの手で売る約束だった。
「2月に沖縄から始めて、7カ月間ずっとひとり旅。沖縄から九州へは飛行機を使ったけど、あとは船とローカル線です。ビジネスホテルの予約もぜんぶ自分で取りました」

つらかったこと、うれしかったこと、7カ月も旅をしていれば語りきれないほどの思い出があるだろう。その中でも特に印象深い出来事を訊くと、ほんの少し口をつぐみ、静かな口調で話し始めた。
「あの地震(東日本大震災)が起きたとき、私は広島にいたんです。当然、駅前は募金とかを呼びかけるひとがたくさんいて、その中で自分は何をしているんだろうって。こんなことやっていていいのかな……。さすがに続けていくことを悩みましたね」
南から北へ。ゴールは北海道。その過程ではもちろん、被災地の東北にも立ち寄る。どこか後ろめたい気持ちを抱えながら、それでも東北の人々は温かく迎えてくれた。
「ほんと、かえってこちらが励まされたんです。『いま聴くもの(ラジカセ)がないけど、CDは買うよ』と言ってくれたり。なんて温かいんだろうって。一つひとつの出会いを通して、学ぶことが多かったですね」

旅を通して得たものとは

旅を通して得たものとは

季節はめぐり、真夏の札幌でゴールを迎えると、ついに手持ちのCDは0枚になっていた。
目標達成! まるで音楽の神様が祝福するかのように、嬉しいニュースが舞い込む。
旅の途中、様々な出会いに感謝して書き上げた楽曲『君がいる』が、多数の公募の中から選ばれ、2011年北海道マラソンのテーマソングに採用されたのだ。

ゴールからわずか2日後に全国メディアで曲が流れると、アウトドアファッションに身を包んだ爽やかな容姿にも注目が集まった。
「山のウェアって風を防いでくれるから、外で歌うのにちょうど良いんですね。山ガール向けのカラフルな服も増えていた時期で、これを私のトレードマークにしようって!」
どんな夢も最初は小さな一歩から始まる。あきらめず、辛抱強く歩き続けることでしか、目標に近づく手段はないのだろう。

2012年秋、『本日のスープ』で念願のメジャーデビュー。プロの道を着実に登り続ける彼女に、今後の抱負を訊ねてみた。
「行き詰まったときほど、山に登りたくなるんです。あんなに高かった壁が、じつはこんなに低かったんだって。あれほど息苦しかった町が、じつはこんなにもちっぽけだったんだって。気づかされることがたくさんある。私の音楽もそんな風に、誰かの背中をそっと押すことができたらうれしいですね」
目指す頂はまだ遙か向こう——。2足のわらじを履いて、今日も懸命に歩いていく。

About PROTREK

「ライブでプロトレックを着けていると、よく女性から『可愛い』と言ってもらえます。今日、私がつけているのは赤だけど、最近のはサイズが小さめ、、ビビッドなカラーリングが増えているのも嬉しいですね。夏は半袖にこれをするだけで存在感があってお薦め。直感的に使いやすいという点も、トリセツが苦手な女性にはポイントが高いです」

PRG-300

PROTREK開発者から見たアンバサダー Developer’s Note

初めて歌を聴いたのは立山黒部のアルペンフェスティバル。
伸びやかな歌声が印象的でした。
若い女性なのに海外の登山経験を持ち、冬山にも登っている。
プロトレックはプロのニーズに応えうるギアですが、普段使いももちろん可能です。
ライトユーザーや加賀谷さんのような女性にも使って頂けるよう、中身だけでなくデザインも常に進化させていきます。

シンガーソングハイカー 加賀谷 はつみ Hatsumi Kagaya

シンガーソングハイカー
加賀谷 はつみ
Hatsumi Kagaya

2012年メジャーデビュー。2013年10月、初のフルアルバム「シンガーソングハイカー」をリリース。山小屋でのライブをイメージした「渋谷アルプス ヒュッテ加賀谷」も定期的に開催。

加賀谷はつみ オフィシャルサイト
kagayahatsumi.com


取材・文:小堀隆司 / 撮影:廣田勇介 / 企画・プロデュース:嵯峨純子(ART OFFICE Prism Inc.)